79Aとは、いかなるものか。

みなさん「79A」という生地をご存じでしょうか?帆布のようで帆布じゃない、ちょっと不思議な生地なんです。ってことで今回は、79Aについて書いてみたいと思います。

79A(ナナキューエーと読みます)は、帆布で最も薄いとされる11号帆布よりもさらに薄手ですが繊維密度の高い生地です。生地そのものは薄いんですが目が詰まっていますので丈夫さがあり、この素材でバッグを作ると軽い仕上がりになります。薄くて、軽くて、わりと頑丈。帆布かばんは初めてという方にも安心してお使いいただける素材といえます。

ところで79A、そもそもこの名前からしてよくわかりません。生地メーカーの中の人にも聞いてみたのですが、どうもはっきりしないんですよ。数字の7と9には何か意味がありそうです。7と9の間といえば8ですが。あるいは横糸と縦糸の本数でしょうか。問い合わせから数日、まだ電話の返事がありません。こちらから電話したところ担当者はしばらく不在とのこと。これはもしかして聞いてはいけない話だったのでしょうか。まさか「牛の首(※1)」じゃあるまいし。

ではさっそく画像で比較してみましょう。

左が11号で、右が79Aです。さっぱり見分けがつきません。

通常、帆布というのは10番手/単糸を何本撚(よ)るかによって厚みが変わっていきますが、この79Aは帆布の中でも一番薄手となり、20番手/双糸引き揃えの組織になります。なので厳密に言っちゃえば、こいつは帆布ではありません。ニアリーハンプ、ハンプモドキです。JISで定められた綿帆布の規格JIS.L-3102(※2)によると最薄手が11号となるため、11号よりもさらに薄い「準帆布」ってところでしょうか。が、薄いからと侮ることなかれ。79Aは薄手ではありますが繊維密度が高く、強度と軽さのバランスが取れた良生地なのです。紙のごとく軽やか。まるで上質な和紙のような佇まいの生地です。

さらに当店の「ロウ引き帆布シリーズ」で使用しているロウ引き帆布は、通常のパラフィン加工とはひと味ちがう加工が施されております。軽量かつ高密度な生地、COTTON79Aをベースに、下処理加工、染色、目止め、パラフィン、特殊焼付け、以上5つの工程に分けた加工が施されており、染色層、目止め層、パラフィン層の3層にわたって樹脂が塗布された多層構造によって、薄地とは思えないボリューム感とコシが生まれています。

画像で表現したら、無言の迫力というか、なかなか凄みが出てきたかもしれない。

防水目止め加工(ODならし)について

目止め加工の際にOD(オリーブドラブ)顔料を混ぜることで、生地の色相がオリーブのオーバーダイ(※3)になります。要するに、ベージュもグレーもなんとなくオリーブっぽい色ベースになります。精悍なブラックすらも、どこかうっすら優しい雰囲気を醸し出しております。ごく自然に、持ちやすい、合わせやすい、と思える色に仕上げております。ついでに防水性も向上している気がします。これも他のパラフィン帆布とは違う当店ならではのこだわりです。

パラフィン帆布は、生地の中でパラフィンの成分が固形化しているので、折り目をつけると折り目のパラフィン成分が破断して折れ目から白化したり、独特のチョークマーク(チョークで引っ掻いたような白いすじ)が出来たりします。使い込んでいくことによって味わいが足されてゆき、独特の風合いが楽しめます。また生地のハリ感は、使い込むほどこなれて柔らかくなります。つまりこの鞄は、お客様ご自身の手に届いてからが最終工程なのです。世界で1つだけのバッグを仕上げる楽しみも、味わってくださいね。

※1 「牛の首」という題だけの、凄い怖いとされる怪談。題名と、非常に恐ろしい話だということだけわかっていて、その内容は”誰も知らない”というか、そもそも本体の物語は存在しない。
※2 JIS.L-3102(綿帆布)については、1997年2月に規格廃止。
※3 オーバーダイ (overdye) 元の色の上からさらに染める染色技法の一つで、通常の染色では表現しにくい微妙な色が表現可能となる。ところでオーバーという単語が付くと、なんだかちょっとだけ悲しい響きを感じるのは気のせいでしょうか。オーバーフローとか、オーバーワークとか、ゲームオーバーとか。

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