革のできるまで:鞣し(なめし)その2

こんにちは、鞄工房山本メンズバッグセレクトショップの伊藤です。
今回の記事は前回に引き続いて、革の鞣しについてです。
数年前に姫路のタンナー新喜皮革さんに訪問した際の画像を交えつつ、
鞣しの工程をじっくりご紹介してまいります。

馬の皮の塩漬け
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皮をはいだ後、塩漬けにされた馬の皮が山積みであります。
その量、パレットにはみ出さんばかり。いやすっかりはみ出しております。
たてがみとか尻尾の毛がチョロリとでているので馬の皮だとわかります。
サザエの壺焼にブルーチーズを足したような不思議な匂い。
思わず辛口の日本酒が飲みたくなる、そんな匂いです。

この匂いをかいで、全然いけるぜっていう人、おめでとうございます!
まずはタンナー見学の第一関門突破です!

なぜ皮をわざわざ塩漬けにしているのかというと、
皮から水分を抜くことで腐敗を防ぐため。

原皮の大半は海外から船で輸入するので、届くまでに何十日もかかります。
それに海上コンテナ輸送は、コンテナ内部の湿気がものすごいのです。
万が一、運んでいる途中で皮が腐敗しだしたら、たいへんですからね。
また、塩により皮の繊維を柔らかくさせるという狙いもあります。
そのため新喜皮革さんでは届いてから4か月ほど冷蔵庫で寝かせているそうです。

次に、鞣しの準備工程。『水絞り』です。
ドラムと呼ばれる木製のばかでかい樽(たる)の中に原皮を入れて、
24時間グルングルン回しまくって、しっかりと塩抜きと加水をします。
この過程で、余分な皮脂や毛もきれいサッパリ取り除いちゃいます。
洗濯でいうところの「すすぎ」みたいなものです。

それは樽と呼ぶには、あまりに巨大であった・・・
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遠心力とケンカして、敗れたことは一度もないこの俺でも、
この中に放り込まれたらさすがにやばい。言葉の意味はわからんが。

解説せねばなるまい!「水絞り」とは!

巨大な木樽(ドラム)に塩漬けのままの原皮を入れて、
きれいな真水と共に高速回転させる水戻しの作業である。
塩が抜かれることで、皮がうるおい、生皮の状態に戻るのだッ。

なにくわぬ顔で回転しながら、ときおり見計らったかのように
ダバダバシャバダバーッと大量の水を床に排水してくるので
まったく油断もスキもありません。

うっかり近くを通ろうものなら、靴の中まで水浸し。
なので作業中は長靴が必須アイテムなのです。

ドラムで24時間、グルングルンと回されつづけて、
水分をたっぷり吸って重たくなった皮を
手作業で、1枚1枚取り込んでいくところです。

あっ、何かその、むにゅむにゅしてるの1枚ください。
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屋台のおでん屋さんで、ちょっと一杯引っ掛けながら、
次はそうだな、はんぺんでも頼もうか、みたいなノリで書いてしまいました。
だがその重量たるや、1枚当たりおよそ20kgにもなります。
となりの桶から皮をブンブン振って、軽々と取り出しています。
これを一人前に出来るようになるまでにはどれくらいかかることか。
一説によると、皮振り三年ころ八年と言うとか言わないとか。

さあ、いよいよ次が『皮が革になる瞬間』ともいうべき、
タンニンなめしの工程に入ります。ゴクリ。

ピット(穴)と呼ばれる槽が並んでいます。
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The Snake Pit ?
いいえ、ビリー・ライレー・ジムではありません。
これはタンニン溶液で満たされたプール。
革業界の専門用語ではピットと呼ばれています。

穴でもないのに、なぜピットと呼ぶのかといいますと
かつては地面にたくさん穴を掘って、その穴にタンニンを注いで、
穴の中で鞣しや染色などの作業をしていたからです。
北アフリカ北西部にある、モロッコ王国のフェズという都市では、
今でもこの穴掘りによる伝統的な鞣しが行われています。
私も見学したことがありますが、大変なうえに危険が伴う作業です。
現地語で「タンメリ」と呼ばれているこの革の鞣し場については、
また別の機会にでも詳しくご紹介してみたいと思います。

こうしてタンニンの濃度が徐々に濃くなるピット槽を移動させながら
なんと何週間もの時間を掛けて、皮をじっくり鞣していくのです。
皮が革になる瞬間、なーんてカッコつけて書いてしまいましたが
だいぶ長い時間がかるようなので、瞬間ではありませんでした。

えーだったら最初から濃い濃度でやればいいんじゃない、って思うでしょ?

でもタンニンの成分を 薄い⇒濃い の順にしていかないと、
皮の中にまでタンニンが十分に浸透していかず、よい革にはならないんだそうです。
やっぱり手間と時間をかけないと、いいものは作れないのですね。

なんか浮いてる。
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銭湯の薬草風呂とかで、ぷかぷか浮かんでる、
あの正体不明の小袋みたい。
ホンワカ湯気も出てあったかいし、匂いもしているしで、
おやおやこれはまるきり温泉ではありませんか。
〽ハァ~ビバノンノ
思わず一節、ザ・ドリフターズの
「ビバノン音頭」でも唄いたくなります。

この袋の中には、ミモザの樹皮がぎっしり詰まっています。
この樹皮には革を鞣すための良質なタンニンが豊富に含まれているのです。

タンニンにはタンパク質と結合して縮ませる『収斂作用』があります。
口に入れると、ものすごく苦くて苦くて、むしろ痛くって、
あまりの苦さのあまり、口の中がギュムムムと、よじれんばかりです。
やけに生々しい表現だなぁと感じたのではないかと思います。
ええ、口にしましたとも。
身をもって味わいました、タンニンってやつを!
でもよいこは口にしてはいけないよ。本当に本当。

皮の鞣しでは、このタンニンのもつ収斂作用を利用して、
硬化や腐敗に関連するタンパク質を除くのに使っているんですねー。
このあと、革は乾燥されたり、磨かれたり、染色されたりして、
製品革(セイヒンカク)になっていくわけです。

ってことで、今日のお楽しみはここまで!

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