ファスナーについて

こんにちは。鞄工房山本メンズバッグセレクトショップの伊藤です。今回は鞄にも財布にも、かならずと言っていいほど使われている機能部品、ファスナーについて書いてみたいと思います。ファスナーっていろんなとこでよく見ますけど、そのわりによく知らないんじゃないでしょうか。根掘り葉掘り調べてきましたよ。

ファスナーの種類について

当店で販売しているバッグや革小物に使われているファスナーには、大きく分けて次の2つの種類があります。

その1.エレメントが金属でできている金属ファスナー
その2.エレメントがコイル状の樹脂でできているコイルファスナー(樹脂ファスナー)

それぞれの特徴、用途に応じて使い分けられています。なんとなくニュアンスで決まってしまう場合も多いです。(これなら用意できるッスよ、あ、じゃあそれでいいッス)どんなファスナーを使っているかで、メーカーやデザイナーのこだわりが垣間見えるかもしれない。

金属ファスナーについて

金属ファスナーとは、エレメントの材質に丹銅やアルミ、洋白などの金属を使用したファスナーです。素材感を生かしたデザインに向いているため当店の鞄にもよく使われています。

銅合金ファスナー

金属ファスナーといえばこれ、というくらい使用頻度が多いファスナーです。主に銅(Cu)と亜鉛(Zn)の合金である、丹銅という金属が使われることが多いです。同じ銅合金で有名なものとして真鍮がありますが、丹銅は真鍮よりも銅の比率が高めなので硬くて丈夫。この丹銅をベースに黒染めやアンティーク調の風合いを出したりなど、バリエーションもけっこう豊富です。

アルミ合金ファスナー

アルミ合金ファスナーはアルミの軽さを活かしたファスナーです。他の金属ファスナーよりも軽くて抵抗が少ないのでスムーズに開閉できる特徴があります。その一方でアルミはやわらかく衝撃・摩擦・腐食に弱いため、やや耐久性に劣ります。われら金属エレメントの中では、あやつの強度は最弱よ、と他のメタル連中からはちょっと格下扱いされているかもしれない。なおスラッシュメタル四天王(BIG4)といえば「メタリカ(METALLICA)」「メガデス(MEGADETH)」「スレイヤー(SLAYER)」「アンスラックス(ANTHRAX)」です。ファスナーとは全く関係ないですが、よかったら覚えておいてください。

洋白ファスナー

洋白ファスナーはニッケル合金(銅、ニッケル、亜鉛を配合した銀白色の合金)を使用したメタルファスナー中で最も強度の高いファスナーです。ニッケル合金なので100円硬貨のような色あいです。ニッケル+革の組み合わせは、一歩間違うとお兄系の匂いが漂ってきますが、うまく組み合わせるとオシャレで感度の高い質感になります。当店ではきれいめなビジネスバッグを中心に使われています。

EXCELLA(エクセラ)

エレメント1つ1つに光沢研磨をかけたYKKの最高級ファスナーです。たぶんexcellent(最高の)から由来してるであろうことは想像に難くない。さてYKKのカタログには、「エレメントひとつひとつの全面に入念な磨きをかけた滑らかなファスナーです」と書いてあります。とどめには「品位・風格ともファスナーの貴婦人」とまで謳っております。イヤハさすがです。おかげで普通の合金ファスナーよりも滑りが遅いゆっくりめです。だって貴婦人ですから。庶民ファスナーのようにセコセコ動いたりはしないんです。ボクは精神的貴族に位置するってやつです。でもスライダーの動きが渋いわけでも、どっかに引っかかるでもなく確実に開きます。精度を高めた結果、部品同士がかっちりかみ合うからでしょうか、軽快さはないが一度動かせば必殺必中。という印象です。磨きをかけているためエレメントの1コマ単位で美しく、見栄えもするので高級志向の商品に使われています。だって貴婦人ですから。

コイルファスナー(樹脂ファスナー)

かみ合わせの部分がナイロンもしくはポリエステルなどの樹脂でできていて、コイル状に連続成形されているファスナーです。コイルファスナーは1コマ1コマの目が細かいので、飛ばしてかみ合ってしまうのが泣き所です。これって誰もが一回はやったことあるんじゃないでしょうか。金属ファスナーのほうが見た目頑丈そうに見えますが、実際は5番ぐらいの大きさのコイルファスナーを使ったほうがスムーズに作動して耐久性がありますので、ファスナーとしては理想形になるそうです。じゃあどうしてコイルがあんまり使われてないかっていうと、見た目が…ね。内装のファスナーポケットには使われることが多いです。実力はあるんだけど日陰の存在なんです。

ファスナーとジッパーとチャックについて

通常、ファスナー(fastener)という呼び方が業界的には主流ですが、それ以外に、ジッパー(zipper)やチャック(chack)という呼び方もあります。ちょっと調べてみました。

ファスナー(fastener)
英語では fasten とは、締めるとか留めるという意味です。この fasten にerをつけることで、締めるやつ、という意味になります。英語におけるファスナーは、ざっくり言ってしまえば締結部品の総称であるため、あのバリバリ剥がすマジックテープやホックボタン、ねじなんかもじつはファスナーの範疇に含まれます。

ジッパー(zipper)
zipは英語ではビューという音、飛ぶ弾丸などの音、または布を裂く音をあらわす擬音。このzipにerをつけることで、スピーディーに動くやつ、という意味に。ジッパー(zipper)という呼び方は商標名でしたが、アメリカをはじめ英語圏を中心に広く世界に通用しています。ということで海外で困ったらとりあえずジッパーって言っとけば大丈夫かもしれない。

チャック(chack)
チャック(chack)は、日本初の国産ファスナーを製造発売した「日本開閉器/チャック・ファスナー」社の「チャック印」という商標名が名前の由来になっています。チャックって英語じゃなかったんですね。チャックという商標名は巾着をもじってできたんだそうですが、本当でしょうか。あいにく製造元の日本開閉器はなくなっているため事実確認ができませんでした。英語にもチャック(chuck)って単語があるだけにややっこしいです。もう1つ英語でチャックといえば、チャック・ベリーのジョニー・B.グッド (“Johnny B. Goode”)。ジミヘンが1967年6月のモンタレー・ポップ・フェスティバルでカバー演奏したテイクが個人的にはいちばん好きです。というところで本日はこれまで。

79Aとは、いかなるものか。

みなさん「79A」という生地をご存じでしょうか?帆布のようで帆布じゃない、ちょっと不思議な生地なんです。ってことで今回は、79Aについて書いてみたいと思います。

79A(ナナキューエーと読みます)は、帆布で最も薄いとされる11号帆布よりもさらに薄手ですが繊維密度の高い生地です。生地そのものは薄いんですが目が詰まっていますので丈夫さがあり、この素材でバッグを作ると軽い仕上がりになります。薄くて、軽くて、わりと頑丈。帆布かばんは初めてという方にも安心してお使いいただける素材といえます。

ところで79A、そもそもこの名前からしてよくわかりません。生地メーカーの中の人にも聞いてみたのですが、どうもはっきりしないんですよ。数字の7と9には何か意味がありそうです。7と9の間といえば8ですが。あるいは横糸と縦糸の本数でしょうか。問い合わせから数日、まだ電話の返事がありません。こちらから電話したところ担当者はしばらく不在とのこと。これはもしかして聞いてはいけない話だったのでしょうか。まさか「牛の首(※1)」じゃあるまいし。

ではさっそく画像で比較してみましょう。

左が11号で、右が79Aです。さっぱり見分けがつきません。

通常、帆布というのは10番手/単糸を何本撚(よ)るかによって厚みが変わっていきますが、この79Aは帆布の中でも一番薄手となり、20番手/双糸引き揃えの組織になります。なので厳密に言っちゃえば、こいつは帆布ではありません。ニアリーハンプ、ハンプモドキです。JISで定められた綿帆布の規格JIS.L-3102(※2)によると最薄手が11号となるため、11号よりもさらに薄い「準帆布」ってところでしょうか。が、薄いからと侮ることなかれ。79Aは薄手ではありますが繊維密度が高く、強度と軽さのバランスが取れた良生地なのです。紙のごとく軽やか。まるで上質な和紙のような佇まいの生地です。

さらに当店の「ロウ引き帆布シリーズ」で使用しているロウ引き帆布は、通常のパラフィン加工とはひと味ちがう加工が施されております。軽量かつ高密度な生地、COTTON79Aをベースに、下処理加工、染色、目止め、パラフィン、特殊焼付け、以上5つの工程に分けた加工が施されており、染色層、目止め層、パラフィン層の3層にわたって樹脂が塗布された多層構造によって、薄地とは思えないボリューム感とコシが生まれています。

画像で表現したら、無言の迫力というか、なかなか凄みが出てきたかもしれない。

防水目止め加工(ODならし)について

目止め加工の際にOD(オリーブドラブ)顔料を混ぜることで、生地の色相がオリーブのオーバーダイ(※3)になります。要するに、ベージュもグレーもなんとなくオリーブっぽい色ベースになります。精悍なブラックすらも、どこかうっすら優しい雰囲気を醸し出しております。ごく自然に、持ちやすい、合わせやすい、と思える色に仕上げております。ついでに防水性も向上している気がします。これも他のパラフィン帆布とは違う当店ならではのこだわりです。

パラフィン帆布は、生地の中でパラフィンの成分が固形化しているので、折り目をつけると折り目のパラフィン成分が破断して折れ目から白化したり、独特のチョークマーク(チョークで引っ掻いたような白いすじ)が出来たりします。使い込んでいくことによって味わいが足されてゆき、独特の風合いが楽しめます。また生地のハリ感は、使い込むほどこなれて柔らかくなります。つまりこの鞄は、お客様ご自身の手に届いてからが最終工程なのです。世界で1つだけのバッグを仕上げる楽しみも、味わってくださいね。

※1 「牛の首」という題だけの、凄い怖いとされる怪談。題名と、非常に恐ろしい話だということだけわかっていて、その内容は”誰も知らない”というか、そもそも本体の物語は存在しない。
※2 JIS.L-3102(綿帆布)については、1997年2月に規格廃止。
※3 オーバーダイ (overdye) 元の色の上からさらに染める染色技法の一つで、通常の染色では表現しにくい微妙な色が表現可能となる。ところでオーバーという単語が付くと、なんだかちょっとだけ悲しい響きを感じるのは気のせいでしょうか。オーバーフローとか、オーバーワークとか、ゲームオーバーとか。

オイルレザーについて

こんにちは。鞄工房山本メンズバッグセレクトショップの伊藤です。「オイルレザー」という革をご存じでしょうか?オイルレザー、普通の革といったい何が違うの?って思いながらも正直、何が違うのかよくわからないですね。ってことで今回はオイルレザーについて書いてみたいと思います。

今さら聞けない!オイルレザーとは?

オイルレザーは、革になめしを施す際にオイルを染み込ませた革のことです。画像は当店のオイルバケッタ・ボストンバッグ(大)。どうですかこのオイル感、やばいでしょ。オイルレザーは革の繊維にまでオイルを染み込ませているので、しっとりとした触り心地とオイルによる湿りをおびた表情が特徴です。オイルの加減で表情が変わるのでオイルの含有量が多いほど深みが出せますが、革自体の重量は含んだオイルの分だけ重たくなります。あと衣服への色移りなんかも気になるところ。なお Made in USA の製品ではこれでもくらえとばかりにガツンとオイルが入ってるものが多いです。「どうだ、色が移るほどたっぷり入れてあるぞ」とか「汚れ?大丈夫だ、汚れてもいい服を着ろよ」とか、なんかもうどいつもこいつもそんな感じ。いいんだよ、細けえ事は!のひとことで、すべて解決です。

オイルレザーの作り方

加工法はもちろんメーカー(タンナー)によって異なりますが、一般的にはなめし作業の際、タイコと呼ばれる大きな木製の樽に入れ、回転させることで生まれる遠心力と樽にぶつかる衝撃でオイルを染み込ませていきます。出来上がってみないと革の仕上がり具合がわからないため、この作業には長年の経験と勘が重要となります。そして長年の経験と勘でもアゥレレェ?ってなることも。一般的な革よりも製作に手間と時間が掛かるのと、オイルを入れる加工賃も加わるので、どっちかというと高価になる傾向です。

使うとどうなる?オイルレザー

革は乾燥することで繊維が劣化していきます。特に水に濡れた後の乾燥では革の中の水分や栄養素までもが失われてしまいます。よく革を水に濡らすのは厳禁と言われるのはこのためです。革は元たどれば動物の皮、わたしたち人間のお肌と一緒です。そのため革を水濡れと乾燥から守る方法としてオイルを加える手法が生み出されました。本来は防水効果のためだったオイル加工ですが、現在では素材表現の1つとして施されることが多くなっています。オイルレザーに含まれたオイルは革を保護するのと同時に、浸透したオイルが革に馴染んでいくことで艶が生じてきます。よいオイルレザーは使い続けることで「革を育てる」という楽しみを味わうことができる革なのです。

傷が消える? 魔法の革オイルレザー

こちらは生(き)の表情が残った革。至るところキズだらけで、侠客立ちの花山薫さんみたいです。革の風合いを生かすために顔料を使って傷を消していないので、どうしても残ってしまうのです。でも最近はこういう革がめっきりなくなりました。加工を施さない革は爪などですぐに傷がつきやすいのですが、オイルレザーでは革が柔らかくなることでキズが入りやすくなります。え、いいことないやんかと思うかもしれませんが、大丈夫。オイルを含んだことにより指先でこすったり揉んだりすると傷が目立たなくなるのです。あまりに見事に消えるので「傷が消える」という表現をすることもあります。でも、オイルの油分が少なくなると保護効果も薄れてきますので、保革用のクリームでしっかりケアしてあげてくださいね。グリグリっと。

味わいか、それとも使いやすさか

最初にお伝えした通り、オイルが多く入った革ほど味わい深さや経年変化の妙をより強く感じることができるのですが、製品の重量が重くなったり、色移りのリスクが生じます。現在の傾向としては、革に色止め加工や表面を整える加工を施すことが多く、表情ゆたかな革製品が少なくなっています。「均一で安定した品質」の革が供給できるというのは産業的には素晴らしいことですが、その反面「どこから切っても同じ顔、金太郎アメ」な革というのは、いかがでしょうか。これは善悪の問題ではありませんが、たとえば上の画像のような革を作ることはできないんです。光あるところに影がある …何というか、いろいろ考えたくなってしまう問題であります。

柿渋染め帆布

柿渋染め製品画像1

こんにちは。鞄工房山本メンズバッグセレクトショップの伊藤です。伝統的な日本の技術と独特の染めから生まれた趣のある素材で、革よりも軽くて丈夫、いわば帆布の最高級品ともいえるのが柿渋染め帆布です。当店取扱いの柿渋染めは6号帆布という頑丈な布に柿渋染めを何度も繰り返すことにより、より強固さを増しており、抗菌性や撥水性も兼ね備えております。伝統の技法と現代の感性をおりまぜた他の素材にはない独特のテイストが味わえます。

柿渋とは?
柿渋は、青柿を砕いて絞った汁を、発酵熟成させた天然染料です。柿から抽出されるタンニンにより塗布物に防虫、防腐、耐水性を与える性質があるため、柿渋を塗ることにより丈夫で、防腐性・防水性のある生地になります。日本では昔から漁網、酒袋、和傘、漆器など、水回りのものを中心に幅広く利用されてきました。たとえば私の祖母(大正生まれの乙女)が幼い頃は、柿渋染めで和紙を固めて作った火鉢を自作していたそうです。近年、化学塗料の普及と共に影をひそめていましたが、現在では再び、その価値が注目され、さまざまな用途での利用を見直されています。

柿渋染めの特徴

※効果はすべて天然の柿渋によるものですので化学染料や薬品の効果との違いがございますことを予めご了承ください。

染め上げるのに1カ月、さらに生地を寝かせる期間およそ2か月。

渋柿家のバッグには6号帆布という厚手の平織の生地が使用されています。柿渋染めにこだわり続けた長年の研究によって6号帆布が最も柿渋染めバッグに適しているという結論にいたりました。しかし、厚く強固な6号帆布に柿渋の染料を染み込ませるのは難しく、バッグの生地として使えるまでにおよそ3カ月の時間が必要となります。それでも独自の技法と柿渋に対する妥協しないこだわりが他の追随をゆるさない独自の個性を生み出しました。

縫製がきわめて困難。ミシンの針が折れるほどの頑丈な素材をまとめ上げております

バッグの縫製で一部に布の縫い目が一直線でない箇所がございますが、それは使用している帆布がもともと頑丈であり、さらに柿渋染めを何度も繰り返し行うことでより強固な素材に仕上がっているためです。針を通せる箇所がなくなるくらいに繊維が吸着し合あった布の中を、針が通りやすい箇所を通って縫っているため縫製のラインが一直線にとれない箇所がでてきているのです。

最後に柿渋染めのつながりで、ちょっと面白い生地をご紹介します。清酒造りに欠かせなかった道具、酒袋です。

酒袋とは
酒袋(さかぶくろ)は、造り酒屋で「もろみ」を入れてお酒を絞るのに用いた袋です。酒袋は帆布に柿渋を塗って作られていますので、柿渋染め帆布のオリジンともいえる存在。


この酒袋は、造り酒屋さんが廃業された際に縁あって頂いたものです。

長年使い続けたためかあちこちにほつれが生じていますが、その都度、修繕された跡が。繕いながらずっと大切に使われていたことが伺えます。まるでムカデのようなこの特徴的な繕いは、生地を彩る力強いアクセントにすらなっています。一時はこの酒袋の生地を使っての商品も考えましたが、造り酒屋さんで昔ながらに酒袋を使っているところは皆無でした。そもそも何年もかけて道具として使われているため、調達性は限りなく0に近い柿渋染めの酒袋ですが、もはやデッドストック以外では入手不可というきわめて厳しい状況なのです。この貴重な生地、そのうち鞄に生まれ変わらせてやろうかと考えております。

革のできるまで:鞣し(なめし)その2

こんにちは、鞄工房山本メンズバッグセレクトショップの伊藤です。
今回の記事は前回に引き続いて、革の鞣しについてです。
数年前に姫路のタンナー新喜皮革さんに訪問した際の画像を交えつつ、
鞣しの工程をじっくりご紹介してまいります。

馬の皮の塩漬け
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皮をはいだ後、塩漬けにされた馬の皮が山積みであります。
その量、パレットにはみ出さんばかり。いやすっかりはみ出しております。
たてがみとか尻尾の毛がチョロリとでているので馬の皮だとわかります。
サザエの壺焼にブルーチーズを足したような不思議な匂い。
思わず辛口の日本酒が飲みたくなる、そんな匂いです。

この匂いをかいで、全然いけるぜっていう人、おめでとうございます!
まずはタンナー見学の第一関門突破です!

なぜ皮をわざわざ塩漬けにしているのかというと、
皮から水分を抜くことで腐敗を防ぐため。

原皮の大半は海外から船で輸入するので、届くまでに何十日もかかります。
それに海上コンテナ輸送は、コンテナ内部の湿気がものすごいのです。
万が一、運んでいる途中で皮が腐敗しだしたら、たいへんですからね。
また、塩により皮の繊維を柔らかくさせるという狙いもあります。
そのため新喜皮革さんでは届いてから4か月ほど冷蔵庫で寝かせているそうです。

次に、鞣しの準備工程。『水絞り』です。
ドラムと呼ばれる木製のばかでかい樽(たる)の中に原皮を入れて、
24時間グルングルン回しまくって、しっかりと塩抜きと加水をします。
この過程で、余分な皮脂や毛もきれいサッパリ取り除いちゃいます。
洗濯でいうところの「すすぎ」みたいなものです。

それは樽と呼ぶには、あまりに巨大であった・・・
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遠心力とケンカして、敗れたことは一度もないこの俺でも、
この中に放り込まれたらさすがにやばい。言葉の意味はわからんが。

解説せねばなるまい!「水絞り」とは!

巨大な木樽(ドラム)に塩漬けのままの原皮を入れて、
きれいな真水と共に高速回転させる水戻しの作業である。
塩が抜かれることで、皮がうるおい、生皮の状態に戻るのだッ。

なにくわぬ顔で回転しながら、ときおり見計らったかのように
ダバダバシャバダバーッと大量の水を床に排水してくるので
まったく油断もスキもありません。

うっかり近くを通ろうものなら、靴の中まで水浸し。
なので作業中は長靴が必須アイテムなのです。

ドラムで24時間、グルングルンと回されつづけて、
水分をたっぷり吸って重たくなった皮を
手作業で、1枚1枚取り込んでいくところです。

あっ、何かその、むにゅむにゅしてるの1枚ください。
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屋台のおでん屋さんで、ちょっと一杯引っ掛けながら、
次はそうだな、はんぺんでも頼もうか、みたいなノリで書いてしまいました。
だがその重量たるや、1枚当たりおよそ20kgにもなります。
となりの桶から皮をブンブン振って、軽々と取り出しています。
これを一人前に出来るようになるまでにはどれくらいかかることか。
一説によると、皮振り三年ころ八年と言うとか言わないとか。

さあ、いよいよ次が『皮が革になる瞬間』ともいうべき、
タンニンなめしの工程に入ります。ゴクリ。

ピット(穴)と呼ばれる槽が並んでいます。
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The Snake Pit ?
いいえ、ビリー・ライレー・ジムではありません。
これはタンニン溶液で満たされたプール。
革業界の専門用語ではピットと呼ばれています。

穴でもないのに、なぜピットと呼ぶのかといいますと
かつては地面にたくさん穴を掘って、その穴にタンニンを注いで、
穴の中で鞣しや染色などの作業をしていたからです。
北アフリカ北西部にある、モロッコ王国のフェズという都市では、
今でもこの穴掘りによる伝統的な鞣しが行われています。
私も見学したことがありますが、大変なうえに危険が伴う作業です。
現地語で「タンメリ」と呼ばれているこの革の鞣し場については、
また別の機会にでも詳しくご紹介してみたいと思います。

こうしてタンニンの濃度が徐々に濃くなるピット槽を移動させながら
なんと何週間もの時間を掛けて、皮をじっくり鞣していくのです。
皮が革になる瞬間、なーんてカッコつけて書いてしまいましたが
だいぶ長い時間がかるようなので、瞬間ではありませんでした。

えーだったら最初から濃い濃度でやればいいんじゃない、って思うでしょ?

でもタンニンの成分を 薄い⇒濃い の順にしていかないと、
皮の中にまでタンニンが十分に浸透していかず、よい革にはならないんだそうです。
やっぱり手間と時間をかけないと、いいものは作れないのですね。

なんか浮いてる。
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銭湯の薬草風呂とかで、ぷかぷか浮かんでる、
あの正体不明の小袋みたい。
ホンワカ湯気も出てあったかいし、匂いもしているしで、
おやおやこれはまるきり温泉ではありませんか。
〽ハァ~ビバノンノ
思わず一節、ザ・ドリフターズの
「ビバノン音頭」でも唄いたくなります。

この袋の中には、ミモザの樹皮がぎっしり詰まっています。
この樹皮には革を鞣すための良質なタンニンが豊富に含まれているのです。

タンニンにはタンパク質と結合して縮ませる『収斂作用』があります。
口に入れると、ものすごく苦くて苦くて、むしろ痛くって、
あまりの苦さのあまり、口の中がギュムムムと、よじれんばかりです。
やけに生々しい表現だなぁと感じたのではないかと思います。
ええ、口にしましたとも。
身をもって味わいました、タンニンってやつを!
でもよいこは口にしてはいけないよ。本当に本当。

皮の鞣しでは、このタンニンのもつ収斂作用を利用して、
硬化や腐敗に関連するタンパク質を除くのに使っているんですねー。
このあと、革は乾燥されたり、磨かれたり、染色されたりして、
製品革(セイヒンカク)になっていくわけです。

ってことで、今日のお楽しみはここまで!

革のできるまで:鞣し(なめし)

こんにちは、鞄工房山本メンズバッグセレクトショップの伊藤です。
今回の記事は「鞣し」の基礎知識編です。

「皮」と「革」
動物から採れる「かわ」を表す漢字には、「皮」と「革」の2種類があります。
学校では「皮」の方を先に習いますから、どんな「かわ」にも、
ついついそちらの字を使いがちかもしれませんね。
しかし、実は「皮」と「革」ではそれぞれ違うものを表しているのですが、
あなたはこの事実、ご存じでしたか?

「皮」の字は「鞣し(なめし)」をする前の、生の動物の皮を表しています。
鞣し前の皮は原皮(げんぴ)と呼ばれ、動物から採った獣皮そのもののことです。
「革」の字は、皮に「鞣し」という加工を施したものを表します。
バッグや靴などを作るためには、まず「皮」を「革」に変える必要があるのです。

話は戻りまして、「皮」を「革」に変えるというのはどういうことなのでしょうか?
この記事では鞣しの秘密に迫って参りたいと思います。

なめしって何?
動物の皮は本来とても柔軟性があるうえに丈夫。
できることなら、そのまま鞄に使えたらいいんですけれども
実際には、そう簡単にはいきません。
鼻からピーナッツを食べるようにはいかないのです。
動物から剥いだ皮は、いわば生肉と同じ状態。
そのままでは腐ってしまったり、乾くと硬くなったりしてしまいます。
そうなららにために薬品や植物の渋などによって、
状態を保存する方法が編み出されました。
これが「なめし(tanning)」と呼ばれる技法です。

なめしの種類と特徴
鞣しの方法にはいくつかの種類がありますが、代表的なものとしては、
(1)タンニン鞣し、(2)クローム鞣し、(3)混合鞣し、の3つの鞣しがあります。

(1) タンニン鞣し
まずは鞣し界の大御所、タンニン鞣しからご紹介いたします。
古くは古代エジプトから続くという伝統的な鞣しの技法であります。
折りからのオーガニック、天然素材、ナチュラルといった時流の流れに乗って、
今では鞣しといえばタンニン、というほどに隆盛を誇っているようです。
その勢いたるや、タンニンに非ずんば革に非ずや。というほど。

タンニン鞣しは、特定の植物に含まれているタンニン成分、つまり渋を使って、
皮の中にあるコラーゲン(たんぱく質)と結合させて鞣す方法です。
そのタンニンはミモザ、チェスナット、ケブラッチョなどの植物から抽出されます。
でも、タンニンっていわれても耳馴染みがないですよね。
いったいどんなものか材料別にサクッと解説してみたいと思います。

(1)-a ミモザ(Mimosa)
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ミモザは、南アフリカのアカシアの木です。元々の原産地はオーストラリア。
それがいつの間にやら、現在では南アフリカで計画栽培されております。
枝がしなやかなので、ワットル(wattle:しなやかな小枝)とも呼ばれています。
ミモザといえば、オレンジカクテルの名を連想する人が多いかもしれません。

(1)-b チェスナット(Chestnut)
“Under the Spreading Chestnut Tree”
ということでチェスナットは、くりの木。フランス・イタリアが主な生産地です。
そのため欧州のタンナー(革の加工業者)で使われることが多い材料です。
チェスナットなのかチェストナットなのか。どうなの。どっちなの。
tは発音してなさそうなのでここではチェスナット表記にしています。

(1)-c ケブラッチョ(Quebracho)
この材料別の解説、このケブラッチョのためにした、と言っても過言ではない。
ケブラッチョは、アルゼンチンの主要輸出品として栽培されているウルシ科の木。
ところでケブラッチョって、あまりにも怪しさ満点の響きなのでちょっと調べてみました。
どうやら現地のスペイン語で「斧をも壊すくらい固てぇだよ」という意味っぽいです。
しかも単一のジュモクの固有名詞ではなく、硬い木の総称なんだとか。
日本でいうところのどんぐり(ブナ科の木の総称)みたいなもの?
ってことはこの山ぜんぶケブラッチョ、見渡す限り地平線の果てまでケブラッチョ、
というエキサイティングな光景が、アルゼンチンの奥深くに眠っているんだろうか。
なお、ラップのcheck it out,yo とはまったく関係はありませんでしたyo!

以上の3つが主なタンニンの原料であり、いうなればタンニン御三家。
このタンニンをもって鞣された革が、皆さんご存じ「ヌメ革」と呼ばれるのであります。
タンニンで鞣された革は、表裏、断層面ともに茶褐色をおびています。
日光に晒されたり、使っていく(つまり革が摩擦、屈曲される)ことによって、
革の内部のタンニンが変成、茶褐色みが増していき、ついには飴色になります。
簡単にいうと、これがタンニン鞣しの革で起きる経年変化の仕組みです。
自然な風合いを、使いながら育てていく…… とても愛着の湧く素材です。ヌメ革って。
でも、経年変化が楽しめるということは、タンニンの茶褐色が強くなるということ。
美しく染めた革は、経年変化による色の変化にどうかご注意ください。
というか、もうこいは宿命て思おて諦めてくれんね。試練ばい。

(2) クローム鞣し
「塩基性硫酸クローム塩」という化合物を溶かした薬液で鞣しを行う方法です。
この塩基性硫酸クローム塩化合物(長い!)がコラーゲンと結合して革が鞣されます。
クローム鞣しの革の断面は青白い色になるため、「ウェットブルー」と呼ばれることも。
耐熱性と柔軟性に優れており、タンニン鞣しと比べて大量生産が可能なため、
19世紀末にドイツで実用化されてからあっという間に世界中に広がりました。
タンニン鞣しの革よりも、お手入れに気を使わなくっていいお気楽さがあります。
その反面、革の経年変化がはっきり出にくいのが短所といえます。
ええ、まったく出ないわけじゃないんですけどね。控えめな子なんです。

(3) 混合鞣し
タンニン鞣しとクローム鞣しのどちらでもない、新しい風合いを出すために、
2種類またはそれ以上の鞣し剤を用いた複合的な鞣し方です。
最初はクローム鞣しの処理を行い、途中からタンニンで仕上げることが多いです。
混合鞣しで作られた革は、柔軟性がありつつも余計な伸縮性は抑えており、
後で入れたタンニン剤の効果によって革の経年変化も楽しめることができます。
またこの方法だと、厚みがあって柔らかくしなやか、味わいのある革が作れます。
(タンニン鞣しだと、厚みを求めるほど硬くて締まった革になってしまいます)
タンニン、クローム両方の鞣し方のいわば「いいとこ取り」を狙った作り方といえます。
どちらかの鞣し剤単独使用の欠点を補うことができるため、主流となりつつあります。
その他、一回入れたクロームを抜き取ってからタンニン鞣しをするという、
掟破りの「脱クロームタンニン鞣し」などの新しい技法も登場し始めました。

だいぶ長くなってしまいましたので、前後編でいきたいと思います。
次回は鞣しの工程に迫ってみましょう。それではまた~。

鞄の種類:トートバッグ

こんにちは。鞄工房山本のメンズバッグセレクトショップ担当です。
今回は、トートバッグを取り上げてみたいと思います。

トートバッグの「トート」には、俗語で「運ぶ・背負う」という意味があります。
アウトドアブランド「L.L.Bean」が、トートの原型を作ったことで世に広まりました。
そんな「L.L.Bean」の代名詞といえばやっぱりビーンブーツですね。
あの不思議なパターンの靴底と「防水さもあらん」とばかりにゴムで覆われた甲の部分、
土踏まずには鉄板まで仕込んであって、おっそろしく屈強な作りのブーツです。

ビーンブーツといえば、買った翌日にうっかりバイクツーリングに出かけ、
靴が重いやら、痛いやらで、半泣きだった20才のクリスマスを思い出します。
認めたくないものだな、若さ故の過ちというものは。というやつです。
なので、ビーンブーツを颯爽と履きこなしている(ように見える)人がいると
尊敬と羨望のまなざしで見つめてしまいます。そして何故かちょっと遠い目。
あ、あれ、気がついたら鞄ではなく靴の話になってしまいました。

トートバッグの原型は「L.L.Bean」が1944年に発売した「アイスキャリァー」です。
電気冷蔵庫が普及していなかった当時、氷を運ぶためのバッグとして開発されました。
え、電気式?コンセントのない冷蔵庫ってあるの?って思ったそこのアナタ。
初期の冷蔵庫(冷蔵箱)って、氷で冷やす仕組みだったんですよ。
上の段にばかでかい氷を入れて、下の段に入れたものを冷やすという理屈です。
空気は冷たいほうが密度が高い→密度が高い(重い)空気は下に流れる、
という物理現象に基づくナイス家電。いやナイス家具というべきか。
でも氷が溶けたら補充しなきゃいけないので、その氷を運ぶために用いられました。

その後、時代の流れ(電化)とともにいったんは生産終了となりましたが、
1965年には、不死鳥のごとく復活をとげました。ひばりー!ふしちょぉぉ!
そんな悲鳴のような歓声が、東京ドームから聞こえたとか聞こえなかったとか。
そんなこんなで川の流れのように、ゆるやかにいくつも、時代は過ぎてゆきまして
現在でも後継商品である「ボート&トートバッグ」が販売されております。
ファッションアイテムとして注目されることが多い今日このごろであります。

さてこのトート、使ってみると便利なバッグだということがすぐにわかります。

なんでもガッポリ入る収納力。
中身が見やすくて取り出しやすい。
ハンドルを掴んで持つだけ。

単純明快。じつにわかりやすい機能です。
ものを持ち運ぶことだけに特化し、ステータス全振りしたそのスタイル。
そのストイックさには、たいへん好感が持てます。

トートにおける最大の欠点は、鞄の中身がまる見えるという点にあります。
他人から自分の持ち物が、まるわかりというのは、いかがなものか。
正直、この1点でトートの購入を諦めている人がどれほどいることか。
わたしは平気ですけどね。職務質問も早くていいですよ。

このトート最大の欠点を補うため、ファスナーがついたものもあります。
収納部分にファスナーが付くことでプライバシーもバッチリ守られるので
近ごろはビジネスカバンとしてのトートという選択肢も増えております。
でもスタイル重視ってことでファスナー無しがいいという声も聞きます。
ファスナー有りか、ファスナー無しか。どっちがどうなんじゃい。
2パターン作っても在庫の山ができるだけなので、悩ましいところであります。

そういえば、バッグよりもファスナーを長くしたもの、ありますよね。
バッグ本体から、まるで舌のようにダラリと垂れ下がっているあのパーツ。
「ファスナーのあのベロ」って言ったら鞄を作ってる職人さんにも一発で通じたので
本当の名前は不明ですが、とりあえず「ベロ」って呼んでます。

これって伊達にファスナーを長くしてるわけじゃなくって、
ファスナーを長くすることで、口元がより大きく開くようにしているんです。
そんなわけで、けっこう便利なんですけどね、ベロ。
でも開けっぱなしにしたままだと、知らないうちにひっくり返って
ねじれまくったあげく、ファスナーが閉められなくなるのでご注意ください。

また口元からの立ち上がり付近ではファスナーが引っかかりやすいので
スライダーを動かすときはちょっとだけ上につまむようにして引いてください。
これで、かなりファスナーの動きがよくなると思いますよ。

ということで今回はここまで!また来週お楽しみに。

 

帆布の世界にようこそ!

こんにちは。鞄工房山本のメンズバッグセレクトショップ担当です。
今回は当店で革と双璧をなす人気の素材、帆布について語ってみたいと思います。

帆布と書いてはんぷ、と読みます。なかなか正確に読んでいただけることが少ない字です。
お客様から「ほふ?」とか「ほぬの?」って呼ばれることが多いです。電話口で聞かれた場合には「○○はんぷですね」って、なるべく自然に、そしてできるだけさり気なく、合いの手を入れたりするのですが、訂正するたびに「難しくって、どうもすみません」と、先代林家三平師匠ばりに心の中でお詫びしております。なおパソコンでは文字変換されないため、仕方なく「ほ・ぬの」と入力しなければならないなど、業界の専門用語という出自であるがゆえか、いささか不遇な扱いを受けているのではないでしょうか。ここはひとつ全国帆布愛好者連盟(略して全帆連)なる団体を立ち上げ、フハッとばかりに鼻息も荒く帆布製品の地位向上を目指したいところであります。立てよ帆布! ところで、いささかという言い回しは、サザエさんの伊佐坂先生の名前ぐらいでしかさいきん聞いてないなぁ。

【帆布とは?】
おおざっぱにいえば、帆布は織られた厚手の布です。綿や麻の糸を何本もよりあわせた「撚糸(ねんし)」と呼ばれる糸から作られています。以前は帆布にJIS規格(日本工業規格)が存在しており、撚糸をどこに何本使うかというところまで厳密に決められていました。海外の帆布(いわゆるキャンバスと呼ばれるもの)は撚糸で作られていないものもあり、こっちは帆布ではなく綿布という扱いになります。ここまでちゃんと知ったうえで両者を区別して販売されているお店は、たぶんないと思います。それぐらい超マニアックなマメ知識です。

さて、この帆布という単語には「帆」という字が当てられていますが、その文字が表すとおり、かつては船の帆に使われていました。帆は船の動力であり、いわば生命線とも言える存在。海洋という過酷な自然環境で使われていたこともあって水に強く、耐久性のある素材として作られたのが帆布の起源だといわれています・・・ヨーソロー!  めんなさい、ちょっと言ってみたかっただけです。現在では帆布は、船の帆以外にも体操用のマット、ベルトコンベアの基材、消防ホースの補強材、おすもうさんのまわしなど、様々な用途で使われています。

帆布の基本的な構造は、とてもシンプル。経糸(たていと)を張り、その間に緯糸(よこいと)を通すというもので、この通し方(織り方)と糸の素材、太さによって、布地の基本的な性格が決まります。洋裁や和裁を習った方なら、もしかしたらご存知だとは思いますが、生地の代表的な織り方には平織(ひらおり)・綾織(あやおり)繻子織(しゅすおり)の3つがあり、これらをまとめて「三原組織(さんげんそしき)」と呼びます。このうち帆布で用いられるのは平織で、経糸と緯糸を直角に交わるように交互に織っていきます。丈夫で、摩擦にも強いという特徴があります。真面目なことばかり書いていたら、なんだかめまいがしてきました。

当店が販売する帆布のバッグは、帆布で作られた鞄というだけでなく、使用する糸の色や太さを変えたり、オイルやパラフィンでコーティングして防水性を高めたり、あるいは生地に個性的な染色を施すことによって、当店ならではの、他にないユニークな帆布商品を生み出しているんですよ。アッハイ、わりとがんばっております。

【帆布の防水性】
ところでみなさん、帆布と聞くと防水で丈夫でゴツイ布。とかそんなイメージがあるのでは?
わたしもそんな印象でした。特に防水。特に商品に明記されてなくても、防水の生地かな? 防水だったらいいな? 防水にしてくれよ! って三段活用で思ってました。実際のところ、帆布に防水性はどのくらいあるのかといいますと、たとえば一般的な帆布でも、水に濡れることで糸が膨張し、隙間がなくなり水を通しにくくなるという作用があります。かつては青果専用のトラックの幌(ほろ)に帆布が使われていたそうです。帆布製のトラック幌は、濡れれば雨水を弾き、乾けばスーッと空気を通したとか。昔の人は経験的にこの帆布の特性を知っていたのでしょうね。やるわね帆布。そんなわけで帆布には、軽いはっ水性があるのですが、過信は禁物。雨の日には防水スプレーも使っていただき、万全の態勢で臨んでいただきたいと思うのであります。

【○号帆布とは?】
帆布の商品名の中に、○号帆布とかの記載がありますね。あれは実は糸の太さなんです。
号の数字が0に近くなるほど太い糸になります(一番太いのは1号です)たとえば10号帆布であれば、10号撚糸で編んだ生地となります。太い撚糸で編むほど、剛性が高くなりコシが生まれますが、鞄としては複雑な構造が作りにくくなり、職人はできれば単純な構造にしたくなります。なのでデザイナーがとんでもないデザインを持ってくると……。
帆布は撚糸のより合わせの回数や織りの密度によって、1号、2号、3号、4号、(5号)、6号、(7号)、8号、9号、10号、11号の厚さに分けられます。1号がもっとも厚手の生地となり、11号が薄手となります。鞄用としては6号から11号までのものがわりとよく使われています。
※カッコ内で囲われた号数の生地を規格外としているメーカーもあります。

【オマケのフハク】
植物繊維で作った織物を「布」、絹で作った織物を「帛(はく)」といい、この両者をあわせて布帛(ふはく)と呼びます。そういえば、以前シャチョウと仕事の話をしていたとき「革とフハクはミシンの掛け方も作り方もちがうからなぁ、フハクフハク」と言われたことがあって、最初は何のことか、何を言ってるのかサッパリわかりませんでした。かろうじて「フは布のフだろうな」ってとこから検討をつけたんですが、帛なんて字、出てこないですよシャッチョウ。

ってことで本日はここまで! また来週、お楽しみに。

革の種類について:牛革

こんにちは。鞄工房山本のメンズバッグセレクトショップ担当です。
今回は「革の種類」について書いてみたいと思います。

まず最初は、みんなが知っている「牛革」です。革といえばやっぱりコレでしょう。
牛革は革の中でも最もベーシックかつスタンダードな革です。牛革は、性別や年齢によって種類が分けられており、呼び名も変わっていきます。以下に詳細をまとめてみました。

 

◆カーフ・スキン(仔牛革)
生後6ヶ月くらいまでの仔牛の革。薄くてキメ細かく、キズが少ないため革小物や女性の靴など美しさを重視する製品に使われることが多いです。仔牛の革なので、牛1頭から取れる量はたいへん少なく、牛革の中ではトップクラスの高級革となります。

◆キップ・スキン(中牛革)
生後6ヶ月~2年以内のもの。仔牛と成牛との中間的な特徴を持った革です。カーフよりも成長しているぶん、厚みと強さが増しています。近年、人気が高まっている革です。大きさは成牛の半分程度までとなり、革小物やバッグや靴などによく使われています。

◆カウ・ハイド/ステア・ハイド/ブル・ハイド(成牛革)
ハイド(hide)は、英語では「隠す、隠れる」という動詞で一般的に用いられますが、
名詞として使われた場合には『革にされる(大きい獣の)獣皮』という意味になります。
この「皮」という文字は、鞣し(なめし)をほどこす前の材料としての状態を表しているので、
ハイドと聞くと、動物から剥がしたありのままの皮、というワイルドなイメージがあります。
たとえば、牛や馬などのような大きい動物の皮革を呼ぶときに使われます。
ちなみに小動物の場合は、スキン(skin)と呼ばれます。主なものではブタやヒツジ。
あ、それと人間の皮ふも。

カウ・ハイド
カウ・ハイドは、生後2年ぐらいの雌牛で、子どもを産んだ経験のある牛の革です。キップよりもさらに厚くて強く、後述のステアほどには厚みはありませんが、キメが細かいです。キップとステアの中間的な革といえます。出産経験のない雌牛のものはカルビンと呼ばれ、さらに上質な革とされています。カルビン、まだお目にかかったことはないんですけどね。

ステア・ハイド
ステア・ハイドは、生後3~6ヶ月以内に去勢した雄牛の革で生後2年以上のもの。牛革は肉牛の副産物であり、安定して良いお肉を供給するため繁殖用以外の雄牛は去勢されています。革質が柔らかく、ぶ厚くて強度もあります。皮革としての品質が安定しているため、製品革(セイヒンカク)としていちばん多く使われている牛革です。記載のない牛革製品は、このステアで作っていることが多いと思われます。みんなの革。

ブル・ハイド
ブル・ハイドは、生後3年以上の雄牛の革。繁殖用の雄牛のため、去勢されていません。
成長した雄牛の革は大判で厚みがあるかわり、繊維が粗くて柔軟性に欠け、靴の底革など厚モノに用いられることが多い革です。また去勢されていない雄牛は気性が荒いため、
製品革になっても、キズが多いのが特徴です。キズも男の勲章です。

 

いかがでしょうか。ひとくちに牛革といっても、たくさんの種類があるのがわかりますね。
生き物の副産物である革は、年齢や性別によって性質が変化していくのですが、
さらに鞣し(なめし)や仕上げなどの加工方法によっても質感や特徴が変わってきます。
よりすばらしい革製品を作るためには、革ごとの性質や特徴を十分に理解したうえで、
デザインや求められる用途によって最適な材料を選ぶ必要があるというわけです。
価格が高いからそれを使えばいい、というわけではないんですね。

今回のブログでは「皮」と「革」という2つの文字が登場しております。
それぞれのちがいについては、後の「なめし」の回でお伝えしたいと思っております。

ということで、次回もどうぞお楽しみに。

 

鞄の種類:ショルダーバッグ

こんにちは。鞄工房山本のメンズバッグセレクトショップ担当です。
今回からは「鞄の種類」について、アレコレ書いていきたいと思います。

まず最初にご紹介するのは当店でも一番人気の商品、ショルダーバッグです。

ショルダーバッグ【shoulder-bag】

ショルダーバッグのカテゴリーに分類されるバッグはたいへん多く、バリエーションも多彩なため、ひとくくりで説明するのは難しいです。困った。早くも暗礁に乗り上げました。

ショルダーバッグという名前のとおり、肩から吊るすためのショルダーストラップが付属されています。ショルダーストラップはDカン、ナスカンと呼ばれる金具を介して本体部分から取り外しができるようになっているものもあります(※バッグの金具については、これはこれでいろいろ面白いので、また別の機会にご説明したいと思います)。ショルダーバッグというからには、やはりショルダー部分の設計が商品のカナメではないかとわたくし思うわけですが、世の中わりとノープランで作られている商品も多かったりします。

 

■ショルダーバッグの形状

ショルダーバッグの形をすべて網羅することはほぼ不可能ですが、当店で分類されている形に基づいてご紹介してみたいと思います。

縦型ショルダー
縦横の寸法のうち、縦の寸法が長いショルダーバッグです。縦型でA4よりも大きいサイズは見たことがありません。後述の横型ショルダーとくらべて[間口が狭く、底が深く]なるため、内装ポケットのレイアウトはやや浅めが理想的です。なぜ浅めが理想的かというと、もし鞄の底とポケットの底が同じ位置に付いていると、ポケットの中を探るときに底まで手を伸ばさなければならず、底が深い縦型ショルダーの場合はちょっと面倒だからです。熟練の職人が作った鞄はこのレイアウトまでしっかり考えて作られています。

横型ショルダー
縦横の寸法のうち、横の寸法が長いショルダーバッグです。メンズ用ではB5~A4のサイズで作られていることが多いです。縦型ショルダーとくらべて深さはありませんが、物を並べて収納することに向いているため、持ち運ぶ物が多い人には横型ショルダーがオススメです。

舟形ショルダー
なぜかこれだけ文字が「型」ではなく「形」になっています。そのほか舟形という単語はトートバッグでも使われています。登場したばかりの頃は、三日月ショルダーとかバナナショルダーとか好き勝手な名称で呼ばれていましたが、やっと舟形に定着した感があります。本体をつまんで吊り下げている形状であることが多いです。鞄底から立ち上がる緩やかな曲線が魅力です。容量?機能? この美しい形に酔いしれましょうよ。

ワンショルダー
ストラップが短く、片方の肩にかける形状のショルダーバッグです。ワンショルダーは女性用のバッグでしたが、おしゃれアイテムとしていつしかメンズのラインにも進出。それまでメンズでワンショルダーといえば、リュックのストラップを1本にした形状のバッグを指していました。このような経緯でワンショルダーという呼び名に2つの形が混在することになりました。当店では前者をワンショルダー、後者をボディバッグとして分類しています。

2WAY,3WAY・・・etc
この表現はショルダーだけにとどまらず、様々なバッグにも使われるようになっています。
WAY、いったいどこまで行くのでしょうか。使い方が増えた分だけお得な感じがするのか、とうとう10WAYを超える、とんでもないものまで登場しました。さすがに5WAY以上となると使い方が変わるわけではなく、ちょっとした見た目の違い程度のようです。ショルダーにもなるし、他のバッグにもなる、様々な使い方ができるというのが本来の形だったはずですが。語尾にウェイってつけたらちょっと楽しそう。俺たちの夏はこれからだぜウェーイ。みたいな。でも、現実的に使い勝手がいいのは2WAYか3WAYまでだと思います。ウェイウェイ。

 

■天と地とファスナーと

収納部の上面がファスナー開閉になったものを天ファスナーと呼びます。上ファスナーでもなんとなく意味は通じそうな気がしますが、なんだか「上カルビ一人前」っぽいので個人的には「天」という言葉のほうがいいんじゃないかという気がします。なお日本語の語彙には、天ファスナーなんて言葉は見当たらないので、業界用語みたいなものだと思います。もし底にファスナーがついていれば地ファスナーと呼ぶのでしょうか。スノーピークのギガパワーストーブ地みたい。でも地ファスナー、仮に実在したとしても何かの拍子にうっかり中身をこぼしそう。

 

■メンズが好む「かぶせ」+「ファスナー」

かぶせ、もしくはフラップとよばれるフタをかぶせるタイプのものがあります。本来はホコリや雨水などを避けるためのものだったはずですが機能を意識して使われている方はいないと思います。いまや単に好みの問題というか、ほぼテイストとなっている感ありです。かぶせ+天ファスナーというタイプもあります。こちらは、かぶせを上に跳ね上げてから中のファスナーを開けるというたいへん面倒くさい構造にも関わらず、男性には人気の組み合わせです。女性からは開け閉めが面倒くさいという理由で敬遠されていますが、男性は、2重構造で中身がしっかり守られている、万が一鞄が倒れても中身がこぼれない、という点に大きなメリットを感じているようです。男性って保守的なんですよ。

 

■ショルダーストラップの材料

①本体と同じ革
こちらはかなり手が込んだ作りといえます。本体と同じ革をストラップとして使う場合、長さが重要なポイントとなります。ストラップにするには、ある程度の長さが必要となりますが革を裁断するにあたり、この長さという条件はなかなか厄介なのであります。鞄を作るときには1枚の革から各部品をどうやって取っていくか、まるでジグソーパズルのように考えて裁断していきます。革の繊維の流れを読みながら部品ごとに最適な部位をあてがっていくわけですが、ショルダーストラップほどの長さとなると裁断する全長も増えるため、革のキズを避けて裁断するのが難しくなり、材料ロスも増えてしまいます。そのため本体と同じ革をストラップに使う際には「継ぎ」という方法を用いて、何枚かのパーツに分割して作ってあることが多いです。またショルダーストラップほどの長さを単一で裁断できる大型裁断機は、どこの職場にもあるわけではないので(むしろないことが多い)製作上の制約から分割している場合もあります。

②本体とちがう革
バッグのショルダーストラップ専用に作られた革、なんてものも材料として流通しています。比較的硬くて厚みがあり、密度のある革が素材として用いられます。中にはベンズと呼ばれる希少部位を使った高級材もあります。また鞄本体に使われている革が柔らかく、伸びやすい特性があるとショルダーストラップとしては不向きなため、革を変えることがあります。

③繊維製(テープ)
綿糸で織ったものやナイロンなど種類は様々です。単にテープと呼んでいます。革とコンビ使いにしたり、革の裏面にテープを裏打ちして2重に縫い合わせることで、色移りや伸びを防ぐなど手をかけて工夫されたものもあります。革で作るよりも軽くて、長さ調節もスムーズ。原価も安く抑えることができるので、テープが標準装備となっていることが多いです。綿糸製のテープは使っていくと摩擦による毛羽立ちが生じるのが欠点です。

 

■ショルダーバッグの持ち方について

ほとんどのショルダーバッグは垂直にまっすぐ下げる持ち方と、斜めにかける2通りの持ち方が可能です。それではそれぞれの持ち方をご紹介していきましょう。

ショルダーを片方の肩から垂直に下げる持ち方、いわゆる「金八持ち」であります。3年B組の担任教師である坂本金八こと「きんぱっつぁん」が使っていたことに由来します。こんなくだらないこと、わざわざコンテンツに取り上げるのは自分ぐらいなものだろう、と高をくくっておりましたところ、すでに他のサイト様で「金八ホールド」という名前で解説されておりました。これにはビックリです。誰が呼んだかこの「金八持ち」スタイルは、バッグ本体を体の側面に近づけることによってコンパクトな持ち歩きが可能となっております。たとえ混雑した電車内でも邪魔にならない、中身の出し入れをすばやく行うことができる、など実用面で便利な点も多く、なかなかあなどれません。お世辞にもスタイリッシュとは言いがたい持ち方ですが、たいへん理にかなったフォームであるといえます。
当店では商品撮影の際、被写体となるバッグに大人っぽさやフォーマルなイメージを印象づけたいときにはこの「金八持ち」にしています。肩が落ちてしまうと、だらしなくみえてしまうため、肩甲骨や僧帽筋の辺りを意識して肩で支えるようにして持つようにしています。うむ、ちょっとプロっぽいコメントかも。

ショルダーを斜めにかける持ち方は男女共有、世代も幅広く、一般的に認知されたスタイルといえるかもしれません。ストラップの長さを短めにして、背中で持つとメッセンジャーバッグみたいでわりとカッコイイですが、うっかり横や前に鞄を持ってきてしまうと、大人が幼稚園児みたいになるのでたいへん危険です。撮影時に斜めがけにして持つときには、ストラップの長さをやや短めにして、バッグは腰からお尻の中間付近にバッグの中心が来るようにセットすることが多いです。お尻よりも下の位置だと、歩くたびにバッグが揺れたりするので実際に使うにあたっても、この位置がベストポジションであるといえます。ひったくりやスリへの予防としても斜めがけは有効な持ち方ですよね。

思いつくまま書いていったらこんな長さになってしまいました。ショルダーバッグについては書き足りないところもありそうですが、思い出したらまた書きます。

それではまた次回を、お楽しみに。